高度生殖医療
体外受精
タイミング法や人工授精等、一般不妊治療が有効でない場合、体外受精の適応となります。自然妊娠では体内で起こる受精の過程を体外で行い、受精した胚を子宮に戻す治療です。 大きく6つの段階に分けることができます。
卵胞発育刺激
自然での排卵は通常1個ですが卵巣刺激することにより多数の卵子を育て、回収することで受精率、妊娠率を高めることができます。使用するホルモン剤には卵子を育てたり、排卵を留めておくものがあり、患者様の状態を診ながら複数組み合わせて使用するのが一般的です。(卵巣刺激を行わない場合もあります。)
アンタゴニスト法 | 卵胞発育刺激の途中からアンタゴニスト使用 |
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クロミッド法 | クロミッドを服用しながら卵胞発育刺激 |
自然周期法 | 自然卵胞発育周期を利用して採卵 |
他、上記方法の組み合わせ
採卵
超音波検査(卵胞径測定)・血液検査等により、採卵日を決定します。採卵に向けて指定時間に排卵刺激を行います。超音波を使ってモニターを確認しながら、成熟した卵胞から長い注射針のような採卵針で膣壁に穿刺し、卵子を吸い込み回収します。卵子は培養液に移され、受精操作の時まで培養庫の中で保管されます。採卵は患者さまの状態によって局所麻酔下で行う場合と全身麻酔下で行う場合があります。
受精
採取した精液を処理し、卵子と受精させる操作を行います。精子処理では密度勾配遠心法やswimup法を用いて良好な精子を選別します。受精の方法は一般体外受精、顕微授精の2通りがあります。
一般体外受精
培養液内にある卵子に選別処理した良好な精子を注入し、精子自身の力で受精させる方法です。ご主人様の精液所見に問題がなければ、基本的にこちらの方法を行います。
顕微授精
一般体外受精で受精しなかったり、ご主人様の精液所見が良好でない場合は顕微授精となります。顕微鏡で観察しながら極細のガラス管を使って1個の精子を卵子細胞質内に注入する方法です。 採卵後の卵子は卵丘細胞という細胞に包まれています。この卵丘細胞をヒアルロニダーゼという酵素を使って取り除きます(裸化)。この段階で卵子の細胞質から極体(polar body:PB)が放出されているかどうかで卵子の成熟度を判断します。未熟な卵子では受精しないので顕微授精に用いることはできません。
受精の確認
媒精・顕微授精の後、約18時間後に受精確認をします。正常な受精卵では精子由来の雄性前核と卵子由来の雌性前核の2つの核が認めることができます。核が3個以上あるものは異常な受精となりますので、移植することはできません。
培養
受精卵が得られれば、移殖や凍結まで培養することになります。培養庫はインキュベーターと呼ばれ、大気中とは異なる二酸化炭素・酸素濃度、温度を調整して体内の環境に近づけています。受精卵は日々分割、発育していきます。培養2日目に4細胞、3日目に8細胞となっていくのが良好な分割スピードです。
移殖
培養し、分割が進んだ受精卵(胚)を超音波ガイド下に子宮腔内へカテーテルを使って戻します。多胎妊娠を避けるため、日本産婦人科学会会告「生殖補助医療における多胎妊娠防止に関する見解」により移殖する数は原則1個としています。(35歳以上の方、または2回以上続けて妊娠不成立の方は2個移殖する場合があります。)
胚盤胞移殖
当院では主に胚盤胞移植を行っています。培養を始めて5日目、6日目(6日目に胚盤胞となった胚はすべて凍結融解胚移植となります)に胚盤胞に育ったものを移殖します。培養2,3日目での分割期の胚を移殖するよりも発育の良い胚を選別できるため妊娠率は高い傾向にありますが、すべての受精卵が胚盤胞に到達するわけではありませんので移殖ができない可能性もあります。また、移殖する際には発育状況の評価をしています。
凍結融解胚移植
移殖した後も良好な胚が残っていたり、子宮内膜が薄かったり、OHSSの回避等で移殖できない時は胚を凍結保存しておくことができます。融解移殖するときは子宮内膜を薬で調整して行いますので妊娠率が上がるとされていますが、少ないながらも凍結の影響を受ける場合があります。/p>
黄体補充
体外受精で強い卵巣刺激を行うとホルモンバランスが乱れてしまうので、そのままではせっかく移植した胚を着床させるには望ましくありません。そこで黄体ホルモン(プロゲステロン)を補充することで子宮を着床しやすい状態にします。妊娠判定まで治療は続き、陽性であればさらに8週目まで続行します。